
猫の腎臓病の検査
猫の腎臓病が疑われる際、動物病院ではどのような検査が行われるのでしょうか。
行われている検査の主なものについて動物病院で聞きました。
血液検査

血液検査は、猫の腎臓病を疑う際に欠かせない検査です。
血液検査の結果を見ることで、腎臓病だけではなく、糖尿病やホルモンの異常、膵炎など、そのほかにもさまざまな病気を発見するきっかけになります。
血液検査によってはじめて見つかる病気もあるため、愛猫の健康管理のためにも、年に一度の血液検査を習慣づけておくことをおすすめします。
ところで、腎臓病かどうかを判断するときは、血液検査の検査表のどの項目を見たらよいのでしょうか。
確認していきましょう。
Cre(クレアチニン)
血液検査の結果で見るべきところのひとつめは「Cre(クレアチニン)」の値です。
- 猫のCre(クレアチニン)値の正常値:0.8~20mg/dl
「クレアチニン」とは、筋肉中で作られる老廃物のひとつで、そのほとんどは腎臓を通って排泄されます。
ところが、排泄されるはずのクレアチニンが血液中にまだ多く残っている場合、それは腎臓の濾過機能が低下していることを意味するのです。
そのため、この値が高いと、腎臓病である可能性が高くなります。
しかし、筋肉量の多い猫もクレアチニンの値が高く出ることもあり、この値が高いからと言って必ずしも腎臓病であるとは限らないようです。
数値だけではなく、他の症状や値を鑑みて腎臓病かどうかの診断がつくのですね。
BUN(尿素窒素)
血液検査の結果で見るべきところのふたつめは「BUN(尿素窒素)」の値です。
- 猫のBUN(尿素窒素)値の正常値:10~30mg/dl
「尿素窒素」とは、血液中の尿素に含まれている窒素のことで、体内でたんぱく質が利用された後にできる残りかすです。
これも、クレアチニンと同様に腎臓を通って排泄されますが、腎臓の濾過機能が低下すると値が高く出ます。
腎臓の機能を確かめる場合は、BUNの値だけではなくて、尿検査もして尿中にタンパクが出ているかどうかを見て、その結果も合わせて判断されます。
SDMA(対称性ジメチルアルギニン)
日本では近年になって検査が可能になった、新しい検査項目です。
- 猫のSDMA(対称性ジメチルアルギニン)値の正常値:0~14μg/dl
「SDMA(対称性ジメチルアルギニン)」とは、体内のアルギニンが「メチル化」して作られる代謝物のひとつです。
これも、前述の二つの物質と同様に腎臓を通って排泄されますが、腎臓の濾過機能が低下すると値が高く出ます。
メチル化とか難しいことを書いてもよくわからないので難しいことを抜きにして解説します。
SDMAはその量のほぼ全量が腎臓の濾過機能によって排泄される物質です。
そのため、この量を図ることによって腎機能が低下しているかどうかをいち早く判断することができるのです。
他のBUNやCreのように他のことに左右されることがないため、より正確に腎臓病を見極めることができるとされています。
しかも、他の検査項目と比べて、猫の腎臓病を17カ月も早く見つけることができるのだそうです。
腎臓病は静かに進行して、気づいたころには手遅れなんてことが多い病気ですから、より早く発見できるようになったことは大変喜ばしいことですね。
尿検査

尿検査では、尿比重(尿の濃さ)や、尿たんぱくを見ます。
猫の腎臓病では、腎臓の働きが落ちると、毒素をうまく排泄することができなくなるため、薄い尿が出たり、尿にたんぱく質が混ざったりします。
健康な状態の猫の尿は濃いものですが、腎臓病の猫の尿は薄いものになります。
これは、腎臓の濾過機能がうまく働かなくなり毒素を排泄できず、体内の水分を必要以上に排泄してしまうためとされています。
尿を持ってきてくださいと言われたら
尿検査のために、猫の尿を採って持ってきてくださいと言われることがあると思います。
そんな時の採尿方法の一例をご紹介します!
どの方法で採尿したとしても、おしっこは新鮮なものが一番です。
採尿するタイミングについては、獣医師の指示に従ってください。
お玉でキャッチ

猫がおしっこをしている時に、お玉や紙コップでおしっこをダイレクトにキャッチするという方法です。
猫がトイレに行くのを見計らう必要があるほか、深追いすると警戒心の強い猫はおしっこを我慢してしまう可能性があるため、あまり万人向けではないかもしれません。
ビニールの上で摂る

いつもの慣れ親しんだトイレの猫砂の上にビニールを敷いておくという方法です。
猫がビニールの上に排尿したことを確認したら、スポイトなどで採尿します。
その際、猫砂が混ざらないように注意深く見守っていてくださいね。
猫がいつものように砂をかいて、おしっこにかぶせてしまったらアウトです。
システムトイレを利用する

普段は、猫用のシステムトイレ下段のトレイにはペットシートを敷いておしっこを集めていると思いますが、ここに何も敷かずに採尿するという方法です。
猫がトイレでおしっこをしたら自動的に下段のトレイにおしっこが集まりますので、ここでご紹介している採尿方法の中ではダントツで楽ちんです。
しかし、飼い猫が1匹のときはよいのですが、2匹以上いる場合、検査対象となる猫がいつおしっこをするか…タイミングを見計らう必要がありますね。
ウロキャッチャーという方法

「ウロキャッチャー」とは犬猫用の採尿器で、動物病院で渡されることもあります。
頻繁に尿検査をしなくてはならない場合は、ストックを置いておくと便利かもしれません。
(ウロキャッチャーは、楽天市場などの通販サイトで手に入れることができます。)
前述したお玉でキャッチのように、猫がおしっこをしている現場でダイレクトにおしっこをキャッチします。
おしっこは再尿器の先端に取り付けられたスポンジで吸収するため、お玉に比べてはるかに猫にかかるストレスは少なく、飼い主もストレスが少なくて済む方法だと思います。
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この記事を書いた人

トム
「猫の腎臓病を知ろう」編集部・編集部員
ひなこの友人で猫好き。30代サラリーマン。
現在は一人暮らしだが実家で2匹の猫と暮らした過去あり。獣医師の友達がいる。